
朝、鏡を見たら歯茎が腫れていた。
触ると痛みがあり、歯磨きすると出血する。
この様な症状を「忙しいから、そのうち治るだろう」と放置していませんか。
でも、歯茎の腫れは、あなたの口腔が発する重大な警告サインです。
見過ごせば、歯を失い、全身の健康まで脅かすかもしれません。
腫れが意味する深刻な現実
歯茎が腫れるということは、細菌と体の免疫力が戦っている証拠です。
最も多い原因は、歯周病の進行です。
歯と歯茎の境目に蓄積したプラーク(歯垢)は細菌の塊です。歯周ポケット内の細菌が急激に増殖すると、歯茎は急に腫れます。
細菌が出す毒素が歯茎の組織に侵入し、炎症を引き起こします。
体は侵入者と戦うため、白血球を送り込みます。
この戦いの場が腫れとして現れるのです。
初期段階では、軽い腫れと出血だけかもしれません。
しかし放置すれば、細菌は歯周組織を破壊しながら、さらに深部へ侵入し続けます。
炎症は、歯茎だけに留まらず、歯を支える骨へと進行が広がり、歯の周囲骨が溶かされ始め、歯周ポケットは更に深くなります。
膿が溜まり、激しい痛みを伴うようになります。
歯茎の腫れは、歯周病だけが原因ではありません。
その他の原因として、親知らず周囲の腫れ(智歯周囲炎)も深刻です。
斜めに生えた親知らずの周りには、歯ブラシが届きません。
食べかすと細菌の蓄積で、歯茎が炎症を起こす事がよくあります。
腫れが悪化すると、口が開けづらくなくなり、喉の痛みで飲み込むことも困難になります。
さらに炎症が広がれば、頬部が腫れ、発熱を伴います。
重症化すると、首や胸にまで炎症が広がり、全身的なリスクが発生します。
また、別の原因として、虫歯が原因で歯の根の先に膿が溜まることもあります。
この場合、歯茎に白いできもののような腫れが現れます。
膿が出たり引いたりを繰り返しますが、これは治っているのではありません。
根の中の感染が繰り返すと、やがて歯を失う原因となります。
応急処置の限界と危険性
仕事が忙しく、すぐに歯科医院に行けない。
その様な場合に冷やすことで、一時的に腫れや痛みを抑える、
市販の痛み止めで痛みを抑えるなどして、しのぐ方もいらっしゃいますが、この様な方法で一時的には痛みが消えたとしても、治っている訳ではありません。
症状を一時的に和らげている間も、患部の細菌感染は進行を続けています。
気づいたときには、歯の周囲骨が大きく失われ、歯がグラグラ動揺してきた…となる事も。
歯周病の場合、進行が進むとその影響は1歯だけに留まらず、お口全体の歯の状態が悪化している場合もあります。
重症化してしまう前に、早めに歯科を受診しましょう。
受診を後回しにする事で、時間も歯の機能も損なう結果に…
「もう少し早く来ていれば、歯を残せたのに」
歯医者嫌いの患者さんは、我慢できないほどの痛みが出てから、ようやく受診します。
しかしその時点で、すでに手遅れになっていることも多いです。
歯周病で溶けた骨は、ほとんど元に戻りません。
虫歯も神経に達する前の段階であれば、歯の神経の治療は必要なく、神経を残して虫歯の治療ができますが、虫歯が神経にまで達し、更に歯の根の先にまで感染が広がると、神経を取る治療が必要になります。
神経を失った歯は、栄養が供給されなくなり、もろく割れやすくなり、歯の耐久年数は神経のある歯と比べて、格段に低くなってしまいます。
神経にまで達した虫歯を長期間放置することで、歯の色も黒ずみ、審美的にも問題が生じます。
何度も繰り返し、歯の根の先が膿んでくるような場合、抜歯となるケースも珍しくはありません。
歯を喪失することで、インプラントやブリッジで歯の形態を補うことはできても、天然歯の持つ繊細な感覚は取り戻せませんし、治療に時間も費用もかかってきます。
また、親知らず周囲の炎症が重症化すれば、入院が必要になることもあります。
抗生物質の点滴治療を数日間受けなければならないケースもあります。
この様なところまで悪化すると、かえって仕事を休まなければならない事態にも繋がり、日常生活への影響も大きくなります。
早期受診がもたらす価値
歯茎の腫れに気づいたら、できるだけ早く歯科医院を受診してください。
早期であれば、より改善の見込みは高くなります。
専門的なクリーニングで歯石やバイオフィルム(細菌性の被膜)を除去し、炎症を鎮めます。
虫歯が原因であれば、歯の根の治療で感染源を取り除く治療をします。
親知らずが原因であれば、先ずはお薬を服用し、腫れが引くのを待ちます。その後、適切な時期に抜歯を検討します。
早期受診のメリットは、治療の負担が少ないことだけではありません。
歯を残せる可能性が格段に高まります。
何より、不可逆的な歯の損失を防ぐことができるのです。
歯医者嫌いな人ほど、早期の治療で、なるべく軽い処置と少ない治療回数で、精神的にも楽になります。
健康を守る優先順位
「忙しくて歯科医院に行けない」
その理由はよく理解できます。
しかし、今の仕事を数時間抜けることと、将来歯を失うことを天秤にかけてください。
歯を失えば、食事の楽しみが奪われます。
人前で笑うことに自信が持てなくなります。
全身の健康にも悪影響が及びます。
一度失った歯の機能を取り戻すために、多くの時間と費用を費やすことになります。
歯茎の腫れは、「様子を見る」べき症状ではありません。
即座に対処すべき、緊急性の高い問題です。
取り戻せない時間と機能
歯茎の腫れを放置して後悔する患者さんは、多数いらっしゃいます。
「あの時、すぐに来ていれば…」と思っても、受診時期が後回しになればなる程、歯を失うリスクは上がります。
腫れに気づいたその瞬間が、行動を起こすべきタイミングです。
応急処置に頼らず、根本的な治療を受けてください。
一生使う歯を守るために、今できる最善の治療を選択しましょう。