ドイツ ハレ 歯科大学

ーテレスコープ義歯の原理

テレスコープ義歯はダブルクラウンとも表現され、2重冠システムを利用したドイツ発祥の独特な義歯です。このシステムでは、筒状の被せものの形をした内冠を歯に被せて固定し、内冠と同じ形をした外冠は義歯の内面に固定されています。義歯をはめる際に内冠の上に外冠付きの義歯を2重に被せて固定する構造をしています。

内冠と外冠は一般的な歯の被せ物の形態と異なり、紙コップの様なシャープで直線的な台形の形体をしているので、2重にピッタリと重ねる事が可能で、この2重冠は嵌合力(カンゴウリョク)により固定されています。この原理により、義歯には金属色のバネなどを使用する事なく、外冠の外装には白い被せもの同様の加工を施せるので、天然歯のようなキレイな見た目でありながら、お口の中で緩んだり、カタついたりといった動きが出にくく安定感のある義歯となります。

また、もう一つの特徴として、歯は1本ずつ個々に離した状態にした状態ですと強度が上がりませんが、内冠と外冠を通して義歯の内部に残っている歯を全て一体化して残す事で、強度が上がります。これをハンマー効果と言います。この効果は1本の矢だと折るのも簡単だが、3本の矢を一片に折ろうと思っても強度が上がって簡単に折れなくなるのと一緒です。

この様な効果を利用する事で、テレスコープ義歯は他の義歯では出せない義歯の安定感と、自然な歯の様に見える見た目のキレイな義歯にする事が可能となります。

ー初期のテレスコープシステム

テレスコープ義歯の歴史は古く、初期のシステムは20世紀初頭にドイツで開発されました。テレスコープ義歯には精密な技術が求められる為、高い技術力を持つ歯科技工士によってのみ製作が可能でした。

初期のテレスコープ義歯は強度的な必要性より、咬合面(歯の上の面で、噛む面)まで金属で作られていましたが、現在では材料の開発が進み、人から見える部分に関しては、白い歯の色に作製する事も可能となった事で、より天然歯の様に見える審美的にもよりキレイな義歯の作製が可能となりました。100年以上の歴史のある義歯ですが、原理の根幹は今でも変わらず通用するもので、今なお唯一無二の優れた義歯システムです。

テレスコープ義歯は、長い歴史からなる技術的な進歩と日進月歩する材料の進化により、古くて新しい確立された義歯治療です。