かみ合わせの基本概念

かみ合わせ、つまり歯の咬み合わせは、口腔内の健康だけでなく、全身の健康にも大きな影響を及ぼします。正しいかみ合わせとは、左右顎関節の動きに連動する形で上下の歯列が全体でバランスよく、スムーズに動かす事ができる歯並びの事です。顎運動がスムーズにできる事は、顎機能の向上に繋がり、効率的な咀嚼を可能にし、顎関節の動きを安定させて、顔貌のバランスや左右の対称性を整えます。

これとは逆に、不正咬合とは、歯のかみ合わせのバランスが顎関節の動きを妨げる様な歯列の事で、口を開ける、閉じる、左右に歯軋りするといった顎運動をしようとした時に、口が開きづらい、顎がカックンカックンなる、食べ物がうまく噛み砕けない…といった症状をきたすかみ合わせの事です。これは顎関節の動きと、歯並びのバランスがうまく連動する様に一致していない状態を示します。この様な顎の状態は咀嚼機能の低下、顎関節症、頭痛や肩こりなどの身体的不調の原因となリます。

矯正治療の目的と効果

矯正治療の主な目的は、歯並びとかみ合わせの改善です。顎関節の動きと調和の取れた歯列、歯の噛み合わせは、咀嚼効率の向上、顎関節症の予防、美しい笑顔の実現が可能になります。また、顎関節の動きとバランスの取れたかみ合わせは、長期的な口腔健康の維持にも寄与し、将来的な歯の損失リスクを減少させます。つまり、本当の意味の矯正治療の目的とは、歯並びはキレイになったが顎機能は低下した…という状況にならない様に、歯並びを顎関節の動きと連動する様な機能的な位置に歯の移動をし、かみ合わせを再構成する治療と言えます。

矯正治療の手法と技術

矯正治療には様々な手法と技術があります。従来のブラケットとワイヤーを用いる方法から、目立ちにくいセラミック製のブラケット、取り外し可能な透明なマウスピース型矯正装置まで。ただ、この様な矯正治療の全ての方法が顎関節の動きと調和の取れた機能的に適正なかみ合わせにする方法とは言えません。審美矯正と呼ばれる矯正治療では、歯列はきれいに整いますが、必ずしもかみ合わせが良くなるとは言えません。その他、小臼歯(歯列の中間に位置する歯)を抜歯して行う矯正の多くは、見た目の歯列は真っ直ぐでキレイになるのですが、かみ合わせを良くする事が難しい矯正治療となります。理由は歯のかみ合わせを構成する要素の中で小臼歯はとても重要な役割を担っているので、小臼歯部を抜歯して行う矯正治療では、顎関節症の発症リスクを上げてしまう傾向がある為です。

この様に、矯正治療にはその使用器具やワイヤー等により、治療結果に差が出る為、治療前によく担当医師の説明を理解し、ご自身のニーズに合った治療内容か否かを選択する必要があります。

治療期間と患者の協力

矯正治療は一般的に数年単位の長期間の治療期間が必要な治療です。治療後の結果は、患者さんの協力度に大きく依存し、全て同じ結果が出る訳ではありません。定期的に決められた歯科診察を受診する事や、矯正装置の適切な管理、良好な口腔衛生の維持が必要です。また、治療期間中はブラケットの破損に繋がる様な食生活を避ける必要があり、その様な注意や、矯正装置の取り扱いについての指導を守る事も重要です。

矯正後の維持とケア

矯正治療が終了した後も、その効果を維持するためには適切なケアが必要です。リテーナーと呼ばれる保定装置の使用により、歯が元の位置に戻るのを防ぎます。リテーナーの使用期間は一般的には矯正治療の動的治療期間と同程度の期間が必要となります。また、定期的な歯科検診を受け、口腔内の健康を維持することが重要です。

かみ合わせを重視した歯の矯正治療は、単に美しい笑顔を作るだけでなく、口腔内の機能改善と全身の健康維持にも寄与します。患者さん一人ひとりに合った目的の矯正治療を選択し、適切なケアを行うことで、その効果を最大限に引き出すことができます。

先ずは、治療前にどの様なお悩みがあるかなどをご相談ください。その方にどの様な必要かをご説明させて頂きます。