最近の統計によると、誤嚥性肺炎は日本人の死因の第6位になっています。

高齢化が進むにつれて、肺炎の順位が急増していて、中でも高齢者の死因に一番多いのが誤嚥性肺炎です。

実は、この病気の最大の原因が口腔内の細菌であることをご存知でしょうか。

食べ物や唾液が誤って気管に入る「誤嚥」そのものよりも、口の中に潜む細菌が肺に入り込むことが重篤な肺炎を引き起こします。

口腔ケアが、文字通り命を守る行為である理由をお伝えします。

口から肺へ、静かに進む感染

加齢とともに、飲み込む機能は徐々に衰えていきます。

口腔周囲筋の筋力が低下してくると、気管と食道を振り分ける喉頭蓋の動きが鈍くなり、唾液や食べ物が誤って気管に入りやすくなります。

健康な人なら、むせることで異物を排出できます。

しかし高齢になると、この反射も弱まり、気づかないうちに誤嚥を繰り返すようになります。

問題は、このとき一緒に肺へ入り込む口腔内の細菌です。

虫歯菌、歯周病菌、舌に付着した細菌。

これらが唾液とともに肺に到達し、炎症を引き起こします。

特に歯周病菌は、肺組織に強い炎症反応を起こすことが知られています。

口腔ケアが不十分だと、口の中の細菌数は爆発的に増加します。

就寝中は唾液の分泌が減り、細菌が最も繁殖しやすい時間帯です。

この間に誤嚥が起これば、大量の細菌が肺に侵入することになるのです。

誤嚥性肺炎は、一度発症すると繰り返しやすく、体力を奪い続けます。

食事が取れなくなり、栄養状態が悪化すると免疫力が落ちてきて、全身の機能が急速に低下していきます。

失われる食べる喜びと生きる力

誤嚥性肺炎を繰り返すと、食事そのものが恐怖になります。

「また肺炎になるのでは」という不安から、食べることを避けるようになります。

好きだった食事が楽しめなくなり、人生の大きな喜びが失われます。

家族との団らんも、食事を通じた交流も、徐々に減っていきます。

経口摂取ができなくなれば、点滴や経管栄養に頼らざるを得なくなります。

口から食べることができないということは、単に栄養補給の問題ではありません。

味わう喜び、選ぶ楽しみ、会話しながら食べる幸せ。

これらすべてが奪われてしまうのです。

さらに、口から食べなくなると、筋力が低下し、口腔機能そのものが急速に衰えます。

噛む力、飲み込む力、唾液を出す力。

使わない機能は、驚くほど早く失われていきます。

一度失った機能を取り戻すことは、極めて困難です。

入院中に1週間横になったままになっていると、歩く事がしんどく大変になってくるのと一緒ですね。

口腔ケアという根本予防

誤嚥性肺炎の予防において、最も効果的なのが徹底した口腔ケアです。

口腔内の細菌数を減らすことで、仮に誤嚥が起きても肺炎のリスクを大幅に下げられます。

毎食後の丁寧な歯磨きはもちろん、舌のケアも重要です。

舌の表面には食べかすや細菌が溜まりやすく、舌苔と呼ばれる白い汚れとなって残ります。

専用の舌ブラシで優しく清掃することで、細菌数を減らせます。

就寝前の口腔ケアは特に重要です。

寝る前にしっかり口腔内を清潔にすることで、夜間の細菌繁殖を抑えられます。

入れ歯を使用している方は、入れ歯のケアも欠かせません。

入れ歯に付着した細菌も、誤嚥性肺炎の原因となります。

専門的な口腔ケアも効果的です。

歯科医院での定期的なクリーニングにより、自分では除去できない細菌の塊を取り除けます。

飲み込む機能を評価し、必要に応じて嚥下訓練の指導を受けることも大切です。

毎日できる予防習慣

起床後は、うがいをして夜間に増えた細菌を洗い流しましょう。

食後は必ず歯磨きを行い、口腔内を清潔に保ちます。

歯間ブラシやフロスも使い、歯と歯の間の汚れも除去します。

よく噛んで食べることで、咀嚼筋の衰えを予防すると共に、筋肉の動きに刺激されて唾液の分泌が促され、自浄作用が高まります。

姿勢を正して食事をすることも、誤嚥予防につながります。

いつまでも健康でいられる選択を

噛む筋肉を衰えさせない事と口腔ケアは、単に歯を守るだけの行為ではありません。

肺を守り、命を守り、食べる喜びを守る、生活の質そのものを支える行為です。

高齢になっても、自分の口で食べ続けられること。

これは金額では測れない、健康維持には欠かせない価値を持っています。

毎日の丁寧なケアと、定期的な専門家のサポートで、生涯にわたって食べる喜びを守り続けましょう。

あなたの口腔の健康が、豊かな人生を支え続けられるように、湘南歯科医院では口腔周囲筋の筋力が低下し、むせ易いなどの症状を持つ人に、お家で毎日行う簡単なトレーニング方法などもレクチャーしています。

この様な症状が気になる方は、是非、当院までご相談を!