よく噛める入れ歯って、どうやって作るの?

一般的な入れ歯の作り方は、既成のトレー(型取りの為のうつわ)を使って上顎の型と下顎の型取りを、別々に行います。そして、入れ歯を作る工程の途中の段階で上と下の入れ歯のかみ合わせを合わせます。この作り方ですと、歯の型取りと歯のかみ合わせを別々に取ることになります。総入れ歯やそれに準ずるお口全体の広範囲の入れ歯を作製する場合には、入れ歯の基のフレームを先に制作し、そのフレーム上で後からかみ合わせを決めます。この様にお口の中の型取りと入れ歯のかみ合わせを2段階に分けて別々に取ると制作段階で入れ歯の噛み合わせに誤差を生じやすくなるため、ピッタリ合う入れ歯制作には向きません。

ピッタリ合う入れ歯の制作は、上顎と下顎の型取りと入れ歯(歯)のかみ合わせを同時に印記することで、両方が一致し、食べ物を噛んだ時のお口の中の型がズレる事なく取れます。この型取りの方法を上下顎同時印象法と言います。この印象方法により、ピッタリとお口の中の形を再現しながら、かみ合った状態も再現できる精密な入れ歯が出来ます。

つまり、痛い入れ歯や噛めない入れ歯は、上と下の顎の位置と、入れ歯の噛める位置とがズレている事で起きる問題で、入れ歯のカタつきや痛みの原因となります。

当院の入れ歯治療について

(1)治療1回目

上顎と下顎の歯型を上下別々に型取りします。

この型取りは、2回目の治療の時に、精密に歯型を取るため、その方用のカスタムトレー(精密に上下の顎の型取りをするための個々の患者様に合わせた個人用の型を取るためのうつわ)を作るための型取りです。

既成のトレーだと、歯型のみしか取れないトレーですが、当院のカスタムトレーは、歯型と上下の歯のかみ合せまで取れる様なトレーをこの時に作ります。

模型

(2) 治療2回目

顎の骨の形は人によって全く違います。

より精密に型を取るためには、その方に合ったカスタムメイドの型取りトレーが必要になります。

このトレーで、上下顎の歯型の型取りとかみ合わせを同時に一緒に取ります。

(上下の顎の型取りとかみ合わせを同時に取っています。)

2回目の歯の型取りで、細部までピッチリと型取りすることで、よく噛める入れ歯が作れますので、

ここがとっても重要な工程です。

下の写真が実際の上下顎を同時に型取りしているところです。

見ていただくと、お口を閉じた状態で型を取っているのが分かると思います。

これにより、上下顎の型だけではなく、舌や頬、口唇の型も取っています。

入れ歯は、この頬や口唇、舌、の形にも合わせた形に作るので、ぴったり隙間なく収まる入れ歯ができます。

フェースボー上下同時印象模型

(3) 上下の歯が咬み合った状態の精密な顎の模型が作れるため、この模型を使ってヒトの顎関節の動きが再現できるドイツカボ社製のプロター7の咬合器を使って顎の動きを再現しながら入れ歯を作ります。

この歯を並べる作業で、よく噛めるように奥歯を並べ、前歯はその方のお顔に合わせた位置や大きさ、色をイメージして作っていきます。当院の入れ歯は、院長がお一人お一人の個性に合わせて作っています。入れ歯に使用する人工の歯は色が天然の歯の色に近いドイツメーカーのものを使用し、歯の色や形もその方の個性に合わせた歯の形態を患者様と一緒に選んでいます。

治療3回目

お口の中で、入れ歯が合うかどうかの仮合わせをします。この時に

・笑った顔の時の前歯の見え方は自然かどうか。下の歯しか見えていないと老けた印象になってしまいますので、笑った口元から上の前歯がどのくらい見えているか…この辺りでお顔の印象も違ってくるので重要です。

・発音はうまく出来ているかどうか。

・上下の顎のかみ合わせの位置は合っているかどうか。

など、色々とお口の中に合わせて、チェックします。

仮義歯

(4)治療4回目

入れ歯のほとんどの部分は樹脂で出来ています。

良い樹脂はじっくり時間をかけて作ります。通常の樹脂は、高温で圧力をいっぱいかけて作るので、出来上がった樹脂は、中に細かい気泡(空気の泡状の空洞)が入りやすく、短時間で仕上げるために樹脂の変形量も増えてしまいます。

樹脂は、作る際に収縮する性質があるので、時間をかけてジワジワ作らないと変形量が大きくなってしまいます。時間をかけてじっくり作ることで、樹脂の内部に細かい気泡が無く、その分強度が上がり、入れ歯が割れにくくなりますし、作る時の変形や縮みも少ないため、入れ歯がお口の中の形とぴったり合います。

当院では、このような方法と材料を吟味して使用しています。

新しい入れ歯をはめたところです。

義歯

治療5回目以降

入れ歯の調整を行って、その方の顎の動きや筋肉の形に入れ歯を合わせていく治療が必要です。

入れ歯は、出来てすぐに終わりにはなりません。合わない入れ歯を長期間使用していたり、お口の中が乾燥していたりする場合は特に、少し使いこなして頂くまでにお時間がかかると思ってください。

それは、足が悪い方に義足をお作りして、「すぐ走れ!」と言っても難しいのと一緒です。

入れ歯の場合は、しゃべったり、食べたり、使って慣れていっていただく必要があります。その為、当院では治療の初期段階より入れ歯を使いこなせる様なお口周りの筋肉のトレーニング方法をご説明して、義歯ができるまでの間にお口の機能を向上を目的とした口輪筋や舌のトレーニングも合わせて行っています。このトレーニングをする事で、今まで噛めなかった、しゃべりにくかった、むせやすかったといった機能の低下を補い、新しい入れ歯へ順応しやすいお手伝いをしています。お口にピッタリ合ったかめる義歯は、食べる、しゃべる、呼吸するといった機能面が向上するので、体が元気に健康になる手助けとなります。

入れ歯や治療に関するご相談はお気軽にお電話かメール相談にてお受けしています!

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