
「最近、食事が楽しくなくなった」
「硬いものが噛めなくなった」
「味がよくわからなくなった気がする」
こうした変化を、年齢のせいだと諦めていませんか。
確かに加齢により口腔内は変化しますが、適切なケアと対策で、多くの機能を維持できます。
放置すれば、食べる喜び、友達との会食、そして全身の健康まで損なわれていくかもしれません。
連鎖的に失われる歯と機能
50歳を過ぎると、虫歯や歯周病の長年の蓄積が、この年代で一気に表面化し始めます。
近年は、60代で残存歯数の平均は24本、70代では20本前後となり、60代で20本以上の歯を保持している人が8割以上に達しています。
健康な口腔では28本(親知らずを含めると32本)の歯が機能しています。
しかし、歯を失うことで、この精密な歯の機能が崩壊していきます。
奥歯を1−2本失うと、咬合力の1/3減少すると言われていて、その影響は他の歯に及び始めます。
失った歯の対合歯が伸びてきて、噛み合わせのバランスが崩れてきます。
残っている歯への負担が増加し、さらなる歯の喪失を招きます。
この連鎖は歯の喪失が増えてくる程、加速度的に進行します。
奥歯は食べ物をすりつぶす役割があり、前歯は切断する役割があります。
その為、奥歯を失えば、食べ物を細かく噛み砕けなくなります。
前歯中心に食事をするようになると、柔らかいものばかりを選ぶ食事に変化していきます。
何でも食べられるお口の状態では無くなってくると、栄養バランスが崩れ、たんぱく質やビタミンが不足します。
筋肉量が減少し、体力や免疫力が低下します。
噛む回数が減ることで、脳への刺激も減少します。
認知機能の低下、記憶力の減退につながることが研究で示されています。
歯の喪失と共に失われた歯の周囲骨は、歯の喪失後にほとんど元へ戻りません。
すり減り、痩せ、もろくなる組織
長年使い続けた歯は、表面が徐々にすり減ります。
特に噛み合わせが良くない人は、奥歯の歯軋りが強くなる為、歯の摩耗が進行し、奥歯の噛み合わせの面が平らになり、食べ物を効率的にすりつぶせなくなります。
歯の表面のエナメル質が薄くなり、内部の象牙質が露出します。
象牙質は黄色っぽい色をしているため、歯全体が黄ばんで見えます。
また、薄くなったエナメル質は割れやすく、欠けやすくなります。
冷たいものや熱いものがしみる知覚過敏も起こりやすくなります。
歯茎も加齢とともに痩せていきます。
歯茎が下がると、歯の根元が露出します。
根の部分はエナメル質で覆われておらず、虫歯になりやすい状態です。
歯が長くなったように見え、見た目にも影響が出ます。
歯と歯の間に隙間ができ、食べ物が挟まりやすくなります。
挟まった食べ物が取れにくくなり、不快感や口臭の原因となります。
合わない入れ歯を使用している方は、カタつく入れ歯を長期間使用していると、歯茎が痩せることで入れ歯が合わなくなります。
すると更にガタガタして安定せず、食事中に外れそうになる。
痛みで長時間装着できない。
こうした問題が生じる事もあります。
口腔周囲筋の筋力低下と口腔乾燥が招く悪循環
加齢に伴い、しっかり噛める歯の状態を保てていない場合、口腔周囲菌の筋力が減り、それに伴って唾液の分泌量が減少します。
唾液には、口腔内を洗浄し、細菌の増殖を抑える重要な働きがあります。
唾液が減ると、自浄作用が低下し、口腔内の衛生状態が悪化します。
虫歯や歯周病のリスクが高まります。
お口の筋力が低下し、唾液も出にくくなってくると、食べ物を飲み込むことも困難になります。
唾液が少ないと、食べ物がパサパサして口の中でまとまりません。
飲み込みにくく、むせやすくなります。
誤嚥性肺炎のリスクも上昇します。
口腔乾燥は、味覚にも影響します。
味を感じる味蕾は、唾液に溶けた成分を受け取ることで機能します。
唾液が少ないと、味を正確に感じ取れなくなります。
食事の楽しみが失われ、食欲も低下します。
友達との会話にも支障が出ます。
口腔周囲筋の筋力が低下してくると、舌の筋力、舌圧が低下して、喋る事も億劫に感じられるようになりますし、唾液が少ないと、口の中で舌がスムーズに動きません。
発音が不明瞭になり、長時間話すことが困難になります。
人とのコミュニケーションを避けるようになり、社会的な孤立につながることもあります。
薬の副作用で唾液分泌が減少することも多くあります。
高血圧、うつ病、アレルギーなどの薬には、口腔乾燥を引き起こすものがあります。
複数の薬を服用していると、その影響は強まります。
顎関節と唇の変化
加齢により奥歯を喪失すると、歯の適正な高さが保てず以前より徐々に高さが短く食い込んできます。すると、顎関節が強く圧迫され、顎の関節も摩耗します。
顎関節が強く圧迫され後方へ押し込まれると、関節のクッションとなる軟骨が前に飛び出てお口が動く経路を塞ぐ事があります。顎関節がこの様な状態になると、顎の動きが不安定になり、口を開けるとパキッ、カクッと音がする、急に大きく口が開かないといった、顎関節症の症状の発現につながる場合もあります。
機能を維持するための積極的ケア
加齢による変化は避けられませんが、適切なケアで進行を遅らせることができます。
毎日の丁寧な口腔ケアが基本です。
コシのある歯ブラシで、歯と歯茎の境目をしっかり磨きます。
特に、露出した歯の根元は虫歯になりやすいため、念入りにケアします。
フッ素配合の歯磨き粉を使用し、歯質を強化します。
歯間ブラシやフロスも重要です。
隙間が広がった歯と歯の間は、食べかすが溜まりやすくなっています。
100%キシリトール入りのガムを噛むことで、唾液の分泌を促進できます。
3ヶ月間以上、毎日定期的に摂取する事で、お口の中の細菌叢が変化し、ネバネバして剥がれにくい菌叢から、歯から剥がれやすい菌叢へ変わる為、お昼に歯磨きができない人にも出来る虫歯予防としてお勧めいたします。
お口が乾くからといって、1日を通して、飴を舐める、スポーツドリンクの様な甘味料入りの飲み物を継続摂取すると、虫歯が出来やすい環境になるので、要注意です。
定期的な歯科検診は、高齢になるほど重要性が増します。
3〜4か月に一度、口腔内の変化をチェックし、普段の生活で自分では気が付かなかった虫歯や歯周病リスクも早期に発見できます。
専門的なクリーニングで、自分では除去できない汚れを取り除きます。
入れ歯の調整、噛み合わせのチェックも定期的に受けましょう。
残っている歯を守るための予防処置も受けられます。
人生の質を支える選択
加齢による口腔の変化は、単なる老化現象ではありません。
適切なケアと専門家のサポートで、多くの機能を維持できます。
最近では、80歳で20本以上の歯を保つ「8020運動」は、日頃のちょっとしたケアで充分可能な目標となってきています。
実際、適切なケアを続けてきた多くの方が達成しています。
歯を保つことは、食べる喜びを守ることです。
家族や友人と同じ食事を楽しみ、旅行先での食事を満喫できます。
会話を楽しみ、毎日笑顔で人と接することができます。
健康な口腔は、全身の健康と生活の質を支える基盤です。
今日からできるケアを始め、定期的な専門家のサポートを受けましょう。
あなたのお口が、これからもより豊かな人生を支え続けられるように。