寝たきりの家族を介護している方へ。

「食べていないから、口の中は汚れていない」

そう考えて、口腔ケアを怠っていませんか。

実は、食事をしていなくても、口腔内の細菌は爆発的に増殖します。

放置すれば、誤嚥性肺炎という命に関わる感染症を引き起こします。

食べなくても増殖する細菌

経管栄養や胃ろうで栄養を摂取している方。

口から食事をしていないのだから、口腔ケアは不要だと思われがちです。

しかし、これは大きな誤解です。

食事をしなくても、口腔内の細菌は活動し続けます。

むしろ、食事をしないことで状況は悪化します。

噛む動作がないため、唾液の分泌が著しく減少します。

唾液には殺菌作用があり、口腔内を洗浄する働きがあります。

この唾液が減ることでドライマウスが進み、細菌が増殖しやすい環境に変化していきます。

頬の内側、お口の粘膜は非核化重曹扁平上皮で覆われています。この上皮の表層にある細胞は、皮膚のように強く核化していないため、表層細胞が自然に剥がれやすい特徴があります。

その為、口腔乾燥が進むと、粘膜が傷つきやすくなります。

細菌が組織に侵入しやすい環境が整ってしまうのです。

舌の表面には、細菌や剥がれた粘膜細胞が堆積します。

白い苔のような舌苔が、どんどん厚くなっていきます。

この舌苔には、数億個の細菌が潜んでいます。

歯茎にも、ネバネバとした細菌の塊が付着します。

口臭が強くなり、介護する側にも大きな負担となります。

何より恐ろしいのは、これらの細菌が肺に侵入することです。

沈黙のうちに進む誤嚥性肺炎

寝たきりの方は、飲み込む力が低下しています。

唾液を無意識に飲み込む反射も弱まっています。

就寝中、細菌を含んだ唾液が少しずつ気管に流れ込みます。

これを「不顕性誤嚥」と呼びます。

本人も家族も気づかないうちに、毎晩繰り返されています。

自然に唾液のような水分が気管に侵入すると、それを排除しようをして、むせる事が多くなってきます。

その為、食事中や日常的にむせる事が多くなってきた場合は、通常は唾液を飲み込むと食道へ流れますが、喉の筋力が低下してくると、適切にこれが出来ずに気管に流れ込みやすい状況を引き起こしてきます。

誤嚥した細菌が肺に到達すると、炎症を引き起こします。

これが誤嚥性肺炎です。

高齢者の死因として、極めて高い割合を占める疾患です。

一度発症すると、繰り返しやすいのが特徴です。

発症するたびに体力が奪われ、回復力が低下します。

食事が取りずらくなり、栄養状態が悪化します。

寝たきりの期間が延びる、床ずれなどの合併症が増えるといったリスクが上がります。

最終的に、命を落とすリスクが非常に高い状態に進行する事になりかねません。

しかし、適切な口腔ケアを行えば、誤嚥性肺炎のリスクは大幅に下がります。

口腔内の細菌数を減らすことが、最も効果的な予防法なのです。

歯を欠損して、入れ歯も使わず外しっぱなしにする事で認知度も高まります

歯を欠損していても、食事が食べられている状態であれば、しっかりお口に適合した入れ歯を作ってください。

そして、しっかり噛んで食べる様な食事を摂る様心掛けます。

噛まなくなると、それだけで唾液は出にくくなり、常にむせ易くなり、飲み込む力が弱っていきます。

体の筋肉は使わなくなると、すぐに弱くなっていってしまいます。

ここから考えると、入れ歯って何歳になっても、どんな状況になっても作れるものではないんです。

実際には、飲み込む力が低下して、むせ易くなったりすると、歯の型取りをするだけでも危険性を伴いますし、

歯科医院に患者様ご自身が通院できるくらいの健康状態でなければ、しっかり適合した入れ歯は作れません。

訪問診療でも場合によっては入れ歯を作る先生もいらっしゃるかもしれませんが、病院のような環境ではないので

適切にあった入れ歯を作るのは、難しくなります。

是非、健康なうちに将来ずっと使える入れ歯を作っておいて下さい。

たまに、「数年経つと入れ歯も合わなくなるんでしょ?」との質問を頂きますが、そんな事はありません。ピッタリお口に適合している入れ歯であれば、10年くらい経過しても、歯茎の部分が変化して合わなくなる事はありません。

また「痩せたり太ったりすると、入れ歯が合わなくなる?」と思ってらっしゃる方もいらっしゃいますが、お口の中の歯茎は脂肪細胞はほとんどなく、骨と粘膜で構成されていますので、体の太る、痩せる事で入れ歯が合わなくなる事はありません。

飲み込む力の筋力アップ

徐々に食事を飲み込む力が落ちてきている、食べる時に頻繁にむせる…といった場合は、

早めに飲み込む力の回復をする事で、口から食べれなくなる状態へ移行してしまう事を

避けられます。

筋力アップには、「エントレ」と言う器具をお口にくわえて、1回のトレーニング時間は5分間、

毎日3回トレーニングを行います。

しっかりトレーニングができていれば、1週間経過するくらいから、徐々に効果が出始めます。

器具を口にくわえる事で出来る簡単なトレーニング方法なので、介護をする方の負担も大きく掛からず

効果がある方法で大変お勧め出来ます。

入れ歯を外しっぱなしにするのは口呼吸へ移行を招きます

毎食後、または食事を口から食べてなかったとしても、毎日の歯磨きは誤嚥性肺炎を予防する上で

とても重要な毎日の習慣です。

食後は毎回、入れ歯を外し、歯を磨き、入れ歯は入れ歯専用のブラシで磨きましょう。キレイに磨いた後は、

夜寝る時も入れ歯をはめておきましょう。

ただし、ゆるい入れ歯で、自然に外れてしまう入れ歯は、就寝時にはめておくのは飲み込んでしまうリスクがあるので、少し危険かもしれません。

しっかりとした固定感のある、緩みの出にくい入れ歯を使用する事をお勧めいたします。

命と尊厳を守る選択

歯の欠損があれば、きちんと適合した入れ歯を使用する。

お口周りの筋力が低下しない様に、毎日の簡単なトレーニングを取り入れる。

起き上がれる様であれば、一日中横になりっぱなしにする事を避ける…

と言った事で、極力寝たきりにならない様な生活にしましょう。

それでも、寝たきりになってしまったら…お口から食事が取れなくなってしまったら…

そんな状況に陥ってしまったとしても、日々の歯磨きは健康状態を保つ上で必要不可欠です。

口臭や汚れは、本人の不快感だけでなく、介護する側の負担にもなります。

何より、適切な口腔ケアは命を守る行為です。

誤嚥性肺炎という死のリスクを大幅に減らすことができます。

毎日のケアは大変かもしれません。

しかし、この努力が大切な家族の命を守ります。

一人で抱え込まず、訪問歯科診療などを活用して頂くのも良い方法だと思います。

適切なケアの方法を学び、継続的なサポートを受けることで、負担は軽減されます。

寝たきりの方の口腔と命が、これからも守られますように。

今日からできるケアを始め、専門家との連携を築いていきましょう。