
歯並びが悪いというと、多くの方が「見た目の問題」として捉えがちです。
でこぼこした歯並びが気になる、笑顔に自信が持てない。
しかし実際には、歯並びの乱れは、全身の健康と密接に関わっています。
見た目を超えた、歯列不正が及ぼす広範囲な影響についてお伝えします。
磨き残しが多い歯並びは虫歯リスクを上げる結果に…
歯の重なりがなく歯並びが良いと、歯磨きもしやすく、磨き残しが出来にくい一方、
歯並びが悪く、凸凹した歯列は、歯ブラシが届きにくい部分が生まれやすくなります。
特に、重なり合った歯の間、複雑に入り組んだ歯列。
こうした部分にはプラークが蓄積しやすく、通常のブラッシングでは十分に除去できません。
その結果、虫歯や歯周病のリスクが確実に高まります。
しかも、歯並びが悪い部分は、磨きにくいだけでなく、これらの病気の進行に気づきにくいという問題もあります。
鏡で見ても死角になりやすく、初期の変化を見逃しがちです。
気づいたときには、複数の歯に多くの虫歯ができていたり、歯周病が進行していたりすることも少なくありません。
虫歯で穴が開いた歯質や歯周病で失われた歯を支えている周囲骨や歯周組織は、元には回復しません。
歯周病や虫歯は予防するしかないのです。
長期的にみると、歯並びの問題を放置することは、口腔内の健康を損なうリスクを抱え続けることを意味しているのです。
口呼吸がもたらすドライマウスという悪循環
かみ合わせが悪く、前歯が出ている場合、唇を自然に閉じることが困難になります。
その結果、無意識のうちに口呼吸が習慣化してしまいます。
口呼吸は、口腔内の乾燥を招く大きな要因です。
唾液には、虫歯菌や歯周病菌の増殖を抑える重要な役割があります。
口腔内が乾燥すると、この唾液による防御機能が十分に働かなくなります。
唾液の循環が足りず細菌が繁殖しやすい環境では、虫歯や歯周病がさらに進行しやすくなります。
また、口呼吸が習慣化すると、口が普段から開いたままになり、口輪筋の閉じる機能が働かなくなっている事は、口周りの筋肉のバランスにも悪影響を与えます。
これがさらに上顎の前歯の歯並びを悪化させるという、負の連鎖を生むこともあります。
全身の姿勢にまで及ぶ歪み
歯並びの乱れは、顎の筋肉のバランスを崩す原因となります。
噛み合わせが悪いと、左右どちらかに偏った噛み方をするようになります。
成長期でのこの偏った使い方が、顎周辺の筋肉に不均衡な負担をかけ続けます。
その結果、左右の骨格や筋肉の成長が不均衡になることで、顔が曲がっている、頭痛、首や肩の痛みといった、一見歯とは無関係に思える症状まで現れることがあります。
さらに進行したケースでは、顎の歪みが全身の骨格バランスにまで影響を及ぼすことも報告されています。
頭の重さは成人で8キロ位と言われていますが、顎に歪みがあると、頭が左右方向に偏位する為、首が傾き、その影響で姿勢の乱れ、体全体の歪みへとつながる可能性も十分あるのです。
こうした症状は、整形外科やマッサージなどで一時的に緩和されても、根本原因である噛み合わせの問題を解決しない限り、繰り返し現れます。
消化器官への負担という見えない影響
歯並びが悪いと、食べ物を効率的に噛み砕くことが難しくなります。
特に、反対咬合(受け口)の人の歯列は、チョッパータイプと言って食べ物をすり潰す顎の動きが取りづらい為、食べ物を切断することしか出来ません。
その他、歯が凸凹に並んでいる歯列では、顎の動きを上下の歯が妨げる為、この様な歯列の人も食べ物を噛み砕く事は難しいです。
十分に咀嚼されないまま飲み込まれた食べ物は、胃腸に大きな負担をかけます。
消化不良を引き起こし、胃腸の調子を崩す原因となることもあります。
噛む効率の低下は、栄養の消化吸収にも影響を与えます。
長期的には、栄養状態や体力にも影響が及ぶ可能性があるのです。
食事は本来、楽しみながら栄養を摂取する大切な時間です。
しかし、しっかり噛めないことで、この当たり前の顎機能が損なわれてしまいます。
歯並びが影響する心の負担
歯列不正は、身体的な影響だけでなく、心理的な側面にも深く関わっています。
歯並びを気にするあまり、人前で話すことや笑うことをためらうようになる方は少なくありません。
無意識のうちに口元を手で隠してしまう。
写真を撮られることを避けるようになる。
こうした行動は、社会生活における自信の喪失につながります。
特に思春期のお子さんにとっては、自己肯定感の形成に大きな影響を与えることもあります。
歯並びへのコンプレックスが、人とのコミュニケーションを避ける原因となり、人間関係の構築にも影響を及ぼすことがあるのです。
歯列不正の種類と特徴
歯列不正には、いくつかの代表的なタイプがあります。
叢生(そうせい)は、顎のスペースが不足し、歯が重なり合って生えている状態です。
歯が複雑に重なっているため、ブラッシングが極めて困難になります。
虫歯や歯周病のリスクが特に高いタイプといえます。
上顎前突は、上あごが下あごよりも前に突出した状態で、一般に出っ歯と呼ばれます。
下顎前突は、その逆で、下あごが前に出ている状態で、受け口として知られています。
いずれも、噛み合わせの機能に影響を及ぼし、発音や咀嚼にも支障をきたすことがあります。
開口は、奥歯だけで噛み合い、前歯が上下に開いてしまっている状態です。
前歯で食べ物を噛み切ることができず、発音にも影響が出やすいタイプです。
これらの歯列不正は、顎の骨格や歯の大きさなど、生まれ持った要因だけで起こるのはなく、成長期の環境的要因の方がより大きく影響を与えていることが多く、日々の努力だけで防げるものではありません。
矯正治療の全てが同じ治療ではありません
一般的な「審美矯正治療」では、単に見た目を整えるだけの処置で、80%以上の矯正治療での目的はここに当てはまります。
湘南歯科医院の矯正治療は、単に見た目の改善を目的ではありません。歯の噛み合わせに起因する、多くの歯の問題や体の不定愁訴(原因がはっきりしないが具合が悪くなること)を改善する目的の、噛み合わせを良くする為の矯正治療です。
歯並びを本来あるべき位置に導くことで、清掃性を向上させ、虫歯や歯周病のリスクを減らします。
正しい噛み合わせを取り戻すことで、顎への負担を軽減し、頭痛や肩こりといった全身症状の改善にもつながる可能性があります。
口呼吸の改善により、口腔内の乾燥を防ぎ、唾液本来の防御機能を取り戻すことができます。
叢生の治療では、小臼歯を抜歯する矯正治療が一般的ですが、これだと噛み合わせが悪化する懸念がある為、湘南歯科医院では歯の噛み合わせを良くするための「小臼歯抜歯をしない矯正治療」を行っています。
歯の凸凹を改善する目的で小臼歯抜歯をしていることも多いのですが、小臼歯を抜歯しなくても、歯の凸凹を治し、きれいな歯並びに直す事は十分可能です。もし、抜歯をする場合には、親知らずを抜歯して奥歯を動かす事を優先して行っています。
重度の上顎前突や下顎前突、開口については、矯正治療に加え、骨格的な問題が大きい場合には外科的処置を併用する可能性もあります。治療前検査で、ワイヤー矯正だけで治る見込みがあるか、外科的処理の併用の可能性があるかは精査する必要があります。
こうした治療は、単に歯を動かすだけでなく、噛み合わせ全体、そして顔貌や骨格のバランスまでを考慮した、総合的なアプローチとなります。
早期の気づきがもたらす価値
歯列不正がもたらす影響は、年齢とともに複雑化していく傾向があります。
放置された噛み合わせの問題は、虫歯や歯周病の進行、顎関節への負担、そして心理的な影響として、じわじわと蓄積していきます。
その為、50代60代になってから、矯正治療を始める人も少なくありません。
一方で、早期に問題に気づき、専門家に相談することで、多くの影響をより軽度に防ぐことができます。
特にお子さんの場合、一次成長の成長期前であれば、顎の発育を利用した治療により、より自然な形で歯並びを整えられる可能性があります。
大人になってからの治療も可能ですが、成長が完了した後の成人矯正治療では、治療の選択肢や期間に違いが生じることもあります。
見た目を超えた健康への投資
歯並びの問題は、決して見た目だけの問題ではありません。
虫歯や歯周病のリスク、口腔内の乾燥、全身の骨格バランス、消化器官への影響、そして心理的な健康まで、幅広く影響を及ぼします。
「歯並びが少し気になる程度」と軽視せず、歯科医院に相談してみることをお勧めします。
あなたの歯並びの状態を詳しく評価し、必要な対応について丁寧に説明いたします。
身体への影響が本格的に現れる前に、一歩踏み出してみませんか。
早めの年代での矯正治療が、その後のお口の健康度と全身の健康度をアップしてくれます。生涯、自分の歯を健康的に保つ選択肢として…気になる症状がある人は、ぜひ一度、お気軽に当院までご相談ください。