補綴治療と矯正治療の融合:難しいかみ合わせの人に対する治療アプローチ

〈補綴治療の限界〉

図1

補綴治療は歯が欠損した部位に入れ歯やブリッジ、インプラントなどの治療をすることで足りない部分の歯を補い、顎機能と口元の審美性を回復するための重要な治療方法です。しかし、図1の方の様に元々の歯並びやかみ合わせが大きく乱れている場合、歯並びをこのままにして、足りない歯を補綴治療だけ治すには限界があります。特に、不正咬合が原因で起こる顎関節の問題や、咀嚼機能の低下は、単に被せて治すだけでは「かみ合わせ」の改善が図れない為、解決できません。

 

〈矯正治療の役割〉

図2

このような歯並び・かみ合わせの方の場合、全てではありませんが、症例によっては矯正治療が重要な役割を果たします。補綴治療の前段階として、矯正治療により歯並びを整え、適切なかみ合わせを作り出すことにより、補綴治療の効果を高め、より自然で機能的な「かみ合わせ」を実現することが可能になります。

図1のまま虫歯の治療や歯の欠損部分を治療しても、上下の歯がうまく機能できない為、噛める、長持ちするお口には治らないのですが、図2の様に上下の歯の位置が噛み合う様に治ってから、補綴治療をすると見た目にもキレイな口元で、尚且つ噛めるお口に治ります。

 

〈かみ合わせの重要性〉

歯のかみ合わせは、呼吸や摂食、咀嚼(そしゃく:食べ物を噛み砕く)、嚥下(えんげ:飲み込み)と言った食べる時に必要な一連の行動を司る為、口腔内の健康状態だけでなく、全身の健康に影響を及ぼします。不正咬合があると顎運動時に咀嚼筋がバランスよく機能出来ず、筋肉が常に過緊張の状態を引き起こします。その為、顎関節症や頭痛、首や肩の痛みなどを引き起こすことがあります。また、適切なかみ合わせは、効率的な咀嚼や発音、美しい笑顔を実現するためにも不可欠です。

 

総合的な治療計画

図3

お口の中の問題は個々によって大きく異なり、全ての人が単純に補綴治療だけ、または矯正治療だけの治療を受けたとしても、問題が解決するとは限りません。この様に1種の治療項目だけでは改善が難しいケースにおいては、補綴治療と矯正治療を組み合わせることで、より総合的な治療計画を立てることが出来ます。このアプローチでは、まず矯正治療によって歯並びとかみ合わせを整え、その後に歯の欠損部分を補う補綴治療を行うことで、より良好なかみ合わせの状態に改善が見込める為、最適な結果を得ることが可能です。図1−3の写真の患者様は、同じ方のお口の中の変化ですが、まずは矯正治療で歯並びのバランスを上下顎で整えてから、補綴治療を行う手順にしています。治療計画は、患者さんの口腔内の状態や全身的な健康状態、審美的な要望度に応じてカスタマイズされます。

 

〈長期的な口腔健康の維持〉

不正咬合がある場合、歯のかみ合わせのバランスを崩している為、早期に歯の欠損を招く事も多々あり、長期的な口腔健康にはバランスの取れたかみ合わせである事が欠かせない条件となります。その為、不正咬合がある場合で、補綴治療のみで不正咬合の改善が見込めないケースにおいては、補綴治療と矯正治療の治療を組み合わせた治療計画をとる事で、かみ合わせの改善とともに歯の欠損が解決出来る為、長期的な口腔健康の維持に寄与します。適切なかみ合わせは、歯や顎関節への過度なストレスを減らし、将来的な歯のトラブルを予防します。また、矯正治療によって改善された歯並びは、日々の口腔ケアを容易にでき、虫歯や歯周病のリスクを低減します。

補綴治療と矯正治療を組み合わせて行う総合的な歯科治療は、単に見た目を美しくするだけでなく、機能的かつ健康的な口腔環境を作り出すことができます。このような総合的なアプローチをする場合は、先ずは患者さん一人ひとりに対して最適な治療計画を立案するところから始める必要があります。適切な治療計画を立案するには、治療前に歯の模型によるかみ合わせ検査やレントゲン検査などにより口腔内状態を総合的に判断する必要があり、適切な治療計画を治療前に立案することにより、その後始まる治療を的確かつスムーズに行う事ができます。