第7回 部分入れ歯になったら考える、残っている歯をどう守るのか? ―残っている歯が徐々に失われていくのは、入れ歯の設計と義歯治療後のメインテナンスに違いが―

―残っている歯が徐々に失われていくのは、入れ歯の設計と義歯治療後のメインテナンスに違いが―
「今は何とか入れ歯を使えているけれど、これ以上歯を失いたくない」
「入れ歯を支えている歯が、だんだんグラグラしてきた」
「入れ歯のバネをかけたら、しっかりしていた歯がグラグラしてきた」
「部分入れ歯を使い続けると、残っている歯まで悪くなってしまうのだろうか?」
このような不安を感じたことはありませんか?
歯を失ったとき、まず考えるのは、歯のない部分をどのように補うかということだと思います。
しかし、部分入れ歯の場合、もう一つ大切なことがあります。
それは、入れ歯を支えている、残りの歯をどう守っていくかということです。
30代以降で歯を失い義歯治療を考えざるを得ない方にとって、残っている歯がその後もどんどん無くなっていくのか、それとも、ここで歯の喪失を止められるのかは、とても重要な問題です。義歯治療を受けたその後、如何に長期間安定したお口の状態を保てるのか…それによって、
食事を楽しむこと。
人前で自然に笑顔でいられること。
自分らしく毎日を過ごすこと。
これらを少しでも長く継続できるためには、失った歯を補うだけでなく、残っている歯の状態にも目を向けることが重要です。
今回は、部分入れ歯を支える歯にはどのような負担がかかるのか、残っている歯を守るためにはどうしたら良いのか、そして湘南歯科医院が義歯治療で重視している考え方について詳しくご紹介します。
1.部分入れ歯を支えている歯は、どんな役割をしているのでしょうか?
部分入れ歯は、失った歯の部分を人工歯で補い、残っている歯や歯ぐきなどを利用して支える装置です。
例えば、奥歯を数本失った場合、残っている歯に金属のバネをかけて入れ歯を支える方法があります。
このとき、入れ歯を支える役割を担う歯を、専門的には「支台歯(しだいし)」と呼びます。
少し難しい言葉ですが、簡単に言えば、入れ歯を支えるために利用する歯のことです。
支台歯は、単に入れ歯を口の中にとどめておくだけではありません。
食事のときに加わる力を受け止めたり、入れ歯が動くのを抑えたりするうえでも重要な役割を担っています。
そのため、部分入れ歯を考えるときには、失った歯の本数だけを見るのではなく、
- どの歯が残っているのか
- 残っている歯は健康な状態なのか
- 歯周病やむし歯になってないか
- どの歯を入れ歯の支えとして利用できるのか
- 噛んだときに、どの歯へどのような力がかかるのか
といった点を診査する必要があります。
残っている歯をどのように、何本利用するかは、部分入れ歯の治療計画を考えるうえで重要なポイントなのです。
2.なぜ、入れ歯を支える歯に負担がかかるのでしょうか?
部分入れ歯は、食事のたびに噛む力を受けています。
また、口を開けたり閉じたり、話をしたりするときにも、舌や頬、口の周囲の筋肉が動きます。
そのため、義歯は単に歯ぐきの上に乗っていればよい訳ではありません。
噛む力や口の中の動きの変化によって形が変わる筋肉の形態に対応しながら、できるだけ安定した状態を保つ必要があります。
例えば、入れ歯が大きく動くと、その動きによって、支えとなる歯は引っ張られるます。
また、噛み合わせのバランスが悪い場合には、特定の歯に力が集中する可能性もあります。
このような負担を考えずに入れ歯を設計すると、義歯の動きだけでなく、支えになっている歯の状態の悪化にも注意が必要になります。
もちろん、部分入れ歯を使うと、必ず残っている歯が悪くなるという訳ではありません。
残っている歯の健康状態、入れ歯の設計、毎日の清掃、装着後の調整やメインテナンスなど、さまざまな要素が関係しています。
大切なのは、入れ歯の安定と共に、支えている歯に無理な負担がかかっていないかまで考慮することです。
3.残っている歯を守るためには、入れ歯の設計が重要です
部分入れ歯の治療では、失った歯を補うことと同時に、残っている歯をどのように守るかを考える必要があります。
例えば、
「入れ歯が外れないようにしたい」
という希望があったとしても、単純に入れ歯を強く固定すればよいとは限りません。
どこで支えるのか。
噛んだときに、どの方向へ動こうとするのか。
その動きをどのように抑えるのか。
残っている歯や歯ぐきに、どのように力が加わるのか。
こうしたことを総合的に診断する必要があります。
特に、奥歯を失った部分入れ歯では、噛んだときに義歯の後方が沈み込んだり、支えとなる歯を中心に回転するように動いたりする場合があります。
そのため、残っている歯の位置や状態、歯を失った範囲などを考慮した設計が重要になります。
良い義歯治療とは、単に外れにくい入れ歯を作ることではありません。
噛む機能を考えながら、残っている歯への負担にも配慮して、義歯を設計することが大切なのです。
4.研究から見えてくる、残っている歯を守るための課題
部分入れ歯を長く使用するうえで、残っている歯の状態は重要な課題です。
2025年に『Journal of Prosthetic Dentistry』に掲載された系統的レビュー・メタ解析では、部分入れ歯の長期的な使用成績について、46件の研究、4,359床の義歯、4,072人の患者データが検討されました。
この解析では、装着から5年後の義歯の生存率は、鋳造金属のバネを使う部分入れ歯で95.1%、テレスコープ冠を利用した部分入れ歯で91.7%と報告されています。両者の間に統計学的な有意差は認められませんでした。
一方で、入れ歯を支える歯は、支えとして利用されていない歯に比べて抜歯のリスクが高く、神経のない歯についても抜歯リスクが高い傾向が示されました。
この研究から分かるのは、テレスコープ義歯は精密に作られた強度のある義歯だからといって、定期的なメンテナンスをしなくて良いという訳では無い事です。
一般的なバネの使う入れ歯では、義歯を支えている歯がグラグラして抜歯になった場合、その都度作り替えが必要となるのですが、テレスコープ義歯の場合は、残っている歯が抜歯になっても、修理をすれば一度作った義歯が長く使用できる点が最大のメリットであり、大きな違いです。
その為、入れ歯を支える歯は、他の歯と比べて歯に力の負担がかかる為、、長期的に見ると抜歯になるリスクが否めません。その為、入れ歯を支える歯(支台歯)の歯数を増やし力を分散するなどの設計上の工夫も必要です。
義歯の種類だけでなく、支えとなる歯の状態や設計、装着後の管理にも目を向ける必要があります。
つまり、残っている歯を守るためには、治療前の診断と治療計画、そして治療後のメインテナンスが重要なのです。
5.残っている歯を守るために、毎日の清掃で気をつけたいこと
義歯の設計と同じくらい大切なのが、毎日の清掃です。
部分入れ歯を使っていると、入れ歯そのものだけでなく、支えとなる歯やその周囲の歯ぐきにも汚れが付着します。
特に、金属のバネをかけている歯や、義歯が接する部分は、汚れが残らないように気をつける必要があります。
汚れが十分に取り除かれない状態が続くと、むし歯や歯周病のリスクにつながります。また、入れ歯の手入れが悪く、歯石や汚れが付いたままだと、それだけで耐久年数は下がります。
普段の義歯の汚れを落とすのは、義歯ブラシなどで機械的に擦って洗えば十分きれいになるのですが、ブラシでまめに汚れを落とさず、強い効果の洗浄剤を頻繁に使用している方の入れ歯は、劣化が早くなる傾向があります、
そのため、毎日のケアでは次の点を意識しましょう。
残っている歯を丁寧に磨く
入れ歯を外せる場合は、残っている歯を一本ずつ丁寧に磨きましょう。
特に、入れ歯を支える歯の周囲や、歯と歯ぐきの境目は汚れが残りやすいため、意識して清掃することが大切です。
入れ歯そのものも清掃する
入れ歯にも食べかすや汚れが付着します。
歯だけを磨いて終わりにせず、義歯そのものも義歯ブラシや歯ブラシで清掃しましょう。1−2日ブラシでの清掃をサボっただけでも、歯石が入れ歯に付着し、その後ブラシでは取れない硬い汚れになってしまいます。
ブラシでの清掃は、毎日朝晩必要ですが、洗浄剤でのつけ置き洗いは、週1−2回程度で十分です。
歯ぐきの状態にも目を向ける
歯ぐきが赤くなっている、腫れている、出血する、入れ歯を入れると痛いなどの変化がある場合には、放置せず歯科医院に相談しましょう。
日本歯科医師会も、部分入れ歯だけでなく、残った歯のお手入れについて情報を公開しています。
毎日の清掃は、残っている歯を守るための基本です。
しかし、清掃だけですべての問題を防げるわけではありません。義歯の状態や歯ぐき、咬み合わせも、定期的に確認していく必要があります。
6.定期的なメインテナンスが大切な理由
「入れ歯を作ったときには問題がなかったのに、最近、入れ歯が動くようになった」
「支えになっている歯が、以前より揺れる気がする」
このような変化が起こることもあります。
口の中は、時間とともに変化するからです。
残っている歯の状態だけでなく、歯ぐきや顎の形、咬み合わせ、義歯の適合なども変わってくることがあります。
そのため、義歯は一度作ったら終わりではありません。
定期的に確認することで、
- 入れ歯の適合や動きに変化がないか
- 支えとなる歯に問題が起きていないか
- 歯ぐきに炎症や傷がないか
- むし歯や歯周病の兆候がないか
- 咬み合わせのバランスが変わっていないか
などをチェックすることが大切です。
日本補綴歯科学会誌に掲載された研究では、部分入れ歯を装着した患者さんを対象に、メインテナンスの頻度と残っている歯の歯周組織の状態との関係が検討されています。研究では、定期的なメインテナンスをより頻繁に受けていたグループでは、入れ歯を支える歯の歯周組織に有意な悪化が認められなかった一方、頻度が低いグループでは一部の指標が悪化していました。
参考論文:
メインテナンスケアが可撤性部分床義歯装着患者の残存歯歯周組織の状態におよぼす影響(日本補綴歯科学会誌)
ただし、この研究は対象人数が限られているため、すべての患者さんに同じ頻度が適切とは限りません。
どのくらいの間隔でメインテナンスを受けるべきかは、お口の状態や義歯の種類などによって異なります。
歯科医師と相談しながら、ご自身に合った間隔でチェックを受けることが大切です。
7.湘南歯科医院が大切にしている「残っている歯を活かす義歯治療」
湘南歯科医院では、ドイツ式のテレスコープ義歯を中心とした自費義歯治療を行っています。
テレスコープ義歯は、残っている歯に「内冠」と呼ばれる冠を装着し、義歯側の「外冠」と組み合わせる二重冠構造を利用した取り外し式の義歯です。
一般的なクラスプ式部分入れ歯とは、義歯を支える仕組みが異なります。
テレスコープ義歯では、残っている歯を単に金属のバネをかける場所として考えるのではなく、どの歯を支えとして利用するのか、義歯をどのように安定させるのかを考えながら設計します。
テレスコープ義歯は応用範囲が広く、お口の中の状態や歯の残っている位置や場所によっても設計を変える事ができるので、どの様なお口の状態であっても、適応する治療が見つかると思います。
その為、「今のお口の状態で、どのような治療が適しているのか」
を診査・診断した上で、治療計画を考えることを大切にしています。
また、義歯を装着した後も、残っている歯や歯ぐき、咬み合わせの状態を確認しながら、必要な調整やメインテナンスを行うことが重要だと考えています。
目指しているのは、単に歯を補うことではありません。
しっかり噛めること。
残っている歯を大切にすること。
自然な口元で、食事や会話を楽しめること。
これらを総合的に考えた義歯治療です。
8.こんなお悩みがある方は、一度ご相談ください
現在、次のようなお悩みはありませんか?
- 部分入れ歯を支えている歯がグラグラする
- 入れ歯が動いて、思うように噛めない
- 入れ歯を作り直したいが、残っている歯への負担が心配
- これ以上、自分の歯を失いたくない
- 入れ歯安定剤を使わないと不安
- 残っている歯をできるだけ活かした義歯治療を考えたい
- テレスコープ義歯について詳しく知りたい
- 将来のことも考えて、長期的な視点で義歯治療を検討したい
残っている歯を守るために大切なのは、歯の本数だけではありません。
今どのような歯が残っていて、どのような状態なのか。そして、その歯を今後どのように守っていくのか。
それを知ることが、義歯治療を考える第一歩になります。
まとめ|失った歯を補うだけでなく、残っている歯を大切にする
部分入れ歯の治療では、失った歯を補うことだけでなく、入れ歯を支える残っている歯をどのように守るかも重要です。
入れ歯の設計、噛んだときの力のかかり方、残っている歯の状態、毎日の清掃、定期的なメインテナンス。
これらを総合的に考えることが、義歯を使い続けていくうえで大切になります。
テレスコープ義歯についても、長期的な使用成績が報告されている一方、残っている歯の状態や装着後の管理に注意が必要です。
だからこそ、
「どの入れ歯が一番良いか」だけではなく、
「自分の残っている歯をどう活かし、どう守っていくか」
という視点から治療を考えてみてはいかがでしょうか。
湘南歯科医院では、残っている歯や歯ぐき、咬み合わせなど、お口全体の状態を確認したうえで、テレスコープ義歯を含めた治療方法を検討しています。
「今の入れ歯をもっと使いやすくしたい」
「残っている歯を大切にしながら、これからの義歯治療を考えたい」
そのようにお考えの方は、一度、現在のお口の状態について相談してみませんか。
失った歯を補うだけでなく、残っている歯を大切にする。
湘南歯科医院では、その考え方を義歯治療の大切な柱としています。
次回は「テレスコープ義歯の二重冠構造」について
次回は、ドイツ式テレスコープ義歯の特徴である「二重冠構造」について、さらに詳しくご紹介します。
「内冠と外冠とは、どのような仕組みなのか?」
「一般的な金属のバネを使う部分入れ歯とは、どこが違うのか?」
テレスコープ義歯を初めて知った方にも分かりやすく解説します。
湘南歯科医院ではドイツ式テレスコープ義歯を中心とした自費義歯治療について、患者様一人ひとりのお口の状態を診査・診断し、その方に合った治療方法を検討しています。
